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サントリー・オールドのハイボールが旨かった件 -小倉「銀天街1923」-


サントリー・オールドのハイボール。

起死回生、執念の『角ハイボール』のプロモーションとヒットそして定着。

「白州」等ジャパニーズウイスキーの異常な評価と高騰。


大企業となった今もサントリーはドラマチックでスリリングである。


昭和の頃、そんなサントリーを代表するウイスキーがオールド、通称ダルマであった。当時、およそライバルを寄せ付けない圧倒的一強の感があったオールドだが、1982年発刊の日本消費者連盟著「ほんものの酒を!』という著作で、それはもう、けちょんけちょんに槍玉に挙げられてしまった。


これは第二弾「続ほんものの酒を!」

指摘事項の詳細は覚えていないが、カラメルで着色しているだとか、アルコールを添加しているだとかで、ウイスキーの定義に反するのではないかという主張であったか?

要は「偽物のウイスキー」として名指しされていた。


今よりは、うんと若く単純で潔癖で無知だった僕はこの著作に相当影響されてしまって、その後、酒だけでなく、広く食品にこういった問題が存在する事を聞き及び、その後の人生にもある程度影響を受ける事となった。


そんなわけで一方的にせよオールドとは少なからず因縁があったのだが、数十年の時を経て小倉のバーにて期せずの対面を果たす事に。


特徴的なボトルの佇まい。

当時はとてもオッサン臭くダサく思えたボトルデザインも、自分が初老の年代になったせいもあるのか、改めて眺めればシンプルで普遍的な美しいデザインであるように思える。


思えば、オールドに限らずサントリーのデザインは一貫して素晴らしい。

酒は付帯事項や背景と共に総合的な情報、情感で味わうものという信念に似たものを感じるし、この事自体は否定されるべきものではない。


『宣伝のサントリー』と揶揄されることも多いが、商品力を核とした文化的情景を付帯させて販売する事は、今コンテンツマーケティングとして多くの企業が取り組んでいることでもあり、ウイスキーが何物か認知の無かったこの国に、しっかり根を張った努力と功績はもっと讃えられて良いかもしれない。


さて件のオールド。

ハイボールで頂いたので、味わいを述べるのは相応しくないかもしれないが、思ってた以上にスモーキーで味わい深い。



粗さが目立ち、レモンピールを搾らないと今一つ成立し難い角のハイボールと比べると、数段完成度が高いように思え、総じて「とても美味しい」。大してウイスキーの味など解らぬ私などには、充分のような気がする。


こうなると忘れられかけたウイスキー、リザーブやローヤルなんかも改めて向き合えば美味しいのかもしれない。



かって正しいと信じた事がそうでは無かった事は山ほどあるし、かって悪だと信じていた事がそうとも言い難い事もままある。


そもそも物事は、正しい間違い、正義と悪の単純な二元論で片付けられない事も少しはわかるお年頃になった。


今呑んだオールドが、名指しで批判を浴びていた頃のものと製法や中身が同じかどうかはわからないが、そのハイボールは素直に美味いと思った。



聞けばサントリー内で銘柄整理の動きもあって、オールドは兎も角、リザーブ・ローヤルは廃盤もあるやもしれぬとの噂。


ならば今、投資すべきか否か。

邪な考えが起き上がる。

若い頃より考えが薄汚れてしまったのは確実。


小倉ハイボールバー「銀天街1923」


 




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