「こんだけ手かけてんだもの、自分たちの米が一番うまいと思うとる」

山に沿うように巡らされた田んぼは、規模も小さく、形も歪。

作業効率の大きく劣るこの地で、土に寄り添い、稲に寄り添い、

慈しむように米を育てた農家は、収穫を前にそう口を揃えます。

その美味しさは、「食味分析鑑定コンクール国際大会」での金賞受賞や毎年の食味評価でも折り紙つき。しかしどうしたことか、その認知度となると、決して高いとは言えません。

そして近年、言われ無き理由で特別栽培米などの出荷は大幅に落ち込み、未だ以前の６割ほどの回復率に留まります。

あの山の向こう側は、新潟県。

山一つ隔てた現実が重く辛くのしかかります。

それでも

「毎年、米を懸命に育てる。そん事に嘘がなけりゃ、

　こんなにうまい米だもの、いつか、西会津の米の良さが伝わるはず」

と農家は目の前の田んぼの世話に余念がありません。

そんな労苦が、何十年、何百年・・・。

思えば米は、今年一年の労によるものではなく、

積年の労と想いが水田に堆積し、実をつけたものかもしれません。

忍耐、諦観、希望、悲しみ、喜び・・・。

様々な想いが注ぎ込まれる田んぼ。

「生きてる限り米を作るんだ。そんで、それを繋いでいくだ」

人から人へ。世代から世代へ。

綿々と紡がれる米作りの物語。米作りとはそう言うものかも知れません。

艶めき、深く、豊かな味わいの西会津町産コシヒカリ。

それは綿々と紡がれる物語の味わいなのかもしれません。