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人里離れた田野原村の合鴨舎

​(株)甘竹田野原の歩み

山深い田野原村の合鴨舎の周辺
合鴨のロースト
合鴨を育てる人
清潔でゆったりした田野原村の合鴨舎

田野畑村に産業を

 

(株)甘竹田野原は、岩手に地元企業であり、南部どりで有名な「アマタケ」と岩手県田野畑村が共同出資し、平成元年に設立された第三セクターです。

雄大な手付かずの自然がダイナミックに広がる海岸線。

日本の原風景を思わせる里山の表情。

長閑ではありますが、ご多聞にもれず過疎化が進み、このままでは衰退の一途を辿るのみ。そんな折、「あんたとこで、何か村の基幹産業になることは出来んか?」と当時の村長、早野さんから、当時の(株)アマタケ社長(現会長)の甘竹さんに打診。二人は旧知の仲でもありました。

 

(株)アマタケは、昭和39年、飼料販売からスタートし、昭和45年からは養鶏業を開始。村長から打診があった平成元年時点では既に、抗生物質・合成抗菌剤を一切使わず、納豆菌やハーブなどを活用した自然由来の飼料で育てる「南部どり」を飼育・出荷。その美味しさ、品質、安定性が評価され、誰もが知る大手外食メーカーの指名を受けるほど、養鶏に於いては、十分な実績とノウハウの蓄積がありました。

そして時は平成元年。

日本経済がその頂点をめがけて駆け上がっている時代。

あらゆる事項で、これまでに無い何かを求めた時代。

皆が少しでも背伸びしようとした時代。

そして食べ物に関しても、より貪欲に「もっとおいしいもの」を求めた時代でした。

 

「あい鴨はどうだろうか?」

甘竹さんの脳裏にそんな構想が浮かびます。

(ようやく本格的なフレンチが一般的にも認知されだした頃。

鴨のコンフィ、マグレ・・・それらはフレンチの花形。

もう直ぐ日本の食生活にあい鴨が普及してくるかもしれない。)

さらに甘竹さんは熟考します。

(しかし、本格的なフレンチで使われるあい鴨の一種「バルバリー」は野趣が強く、強いソースを使うフレンチとは相性が良いものの日本の一般家庭ではどうだろう?

それに比べ、イギリスで改良された「チェリーバレー」は、身質も柔らかく、コクがありながら、クセが少ない。素材の持ち味を活かす和食との相性も良く、こちらの方が喜ばれるに違いない。それに、チェリーバレー種が改良されたイギリス東部リンカンシャー州とここ、北三陸田野畑の気候・風土はそっくり。

これはきっと質の良い「あい鴨」の生産ができる!)

 

「あい鴨の生産をここ、田野畑で一緒にやりましょう」

遂に甘竹さんが決断を下し、(株)アマタケと田野畑村の共同出資による(株)甘竹田野原の歩みが始まりました。

 

一から積み上げるノウハウ

 

「南部どり」生産で積み上げた膨大な定評のあるノウハウ。これを転用すれば、立派な品質のあい鴨ができるはず、でした。

ところが、鶏生産の方法論をあい鴨生産にそのまま適用しても全くうまくいきません。

まず、最初の一歩、卵が孵卵からつまずきました。

鶏と同じ温度、日数をかけても、極めて低い孵卵率にしかなりませんでした。

「鶏は陸鳥。あい鴨は本来水鳥。そもそもの生態が異なるのか」

そんな疑問の元、自然界の真鴨の生態を観察。そしてはるばるイギリスに出向いての研修。それらで得た様々な仮説を元に試行錯誤を繰り返し、一つ一つノウハウを築いていく日々が続きました。

 

あい鴨専用独自飼料

 

そして飼料。

「抗生物質・合成抗菌剤を一切使わず、自然由来の飼料」という南部どり生産の基本姿勢はそのままに、あい鴨に特化した飼料の独自開発に取り組みました。

最も心を砕いたのは、あい鴨肉のクセや匂いを抑えること。もともと、クセの少ないチェリーバレー種ですが、どこの産地のものよりも、より和食にあった、より日本人の好みにあったあい鴨を生産することをテーマとして掲げました。

「どんな飼料を使えば、肉のクセや匂いに繋がるのか?」

ここでも様々な仮説検証が繰り返されました。

時を経て辿り着いたのが、(株)甘竹田野原オリジナルのあい鴨飼料。

「例えば魚粉は安価で、あい鴨の増体率もいいのでよく使われるのですが、これが肉や脂の臭みにも大きく影響します。これを可能な限り抑え、新鮮な穀物の比率を上げています。もちろん、飼料のコストは高くなりますが、『美味しく食べやすい』あい鴨肉の生産では重要なポイント。原価高は企業努力で、他の産地と遜色ない価格でご提供できるように努めています」と事業本部長の今野さんも胸をはります。

 

衛生環境もバッチリ。籾殻のベッドで。

 

鶏舎に目をやると、ふかふかの籾殻がびっしりと敷き詰められているのがわかります。「あれは毎日、新しい籾殻を上に上にと敷き詰めているんです」鶏舎を車上から案内しながら、責任者の馬場さんが説明してくれます。「生き物ですから当然、糞尿はします。毎日籾殻をその上に敷くので、下の糞尿は微生物によって分解されます。最終的には、籾殻共々、発酵分解したいい肥料になるんですよ」そう言えば、一棟あたり2,400羽近く、それが40棟もあろうかと言う施設にもかかわらず、全く嫌な匂いがしません。籾殻のベッドがしっかり機能している証です。

 

北三陸の自然環境そのままの

ゆったりした鶏舎で。

 

本来、水鳥である「あい鴨」。飼育環境も、鶏とは大きく異なります。

「ほら、ああやって」見るとあい鴨が大きく羽ばたきをしています。「池から池へと飛び立つ名残なんでしょうね。水鳥の習性で、羽ばたきをするんです」その羽ばたきをするのに十分なスペースが無いと、あい鴨はストレスを抱え発育が悪くなるのだとか。「大体、鶏に比べて2倍のスペースが必要です。でも、その分ゆったりと育っていきますけどね」鶏舎に目をやると確かに、確かに伸びやかに暮らしているように思えます。「生産効率から言うと良くは無いですが、なるべくストレスをかけずに育てることがおいしいあい鴨を育てるのに大事なことですから」と案内をしてくれた馬場さんが説明してくれます。

鶏舎は密閉されておらず、外気が存分に入るこむように。人の立ち入りこそ厳格に制限されているものの随分オープンな設計です。「温度調整は行っていません。ここ田野原村の山間の自然環境そのままに育てています」北三陸、しかも山間部。冬の積雪と冷え込みはもちろん、夏場であっても朝方はぐんと冷え込みます。「寒暖差の大きい厳しい環境が、あい鴨の美味しさを作り上げているんです」

田野畑の自然と人の知恵、そして努力。それらが注ぎ込まれて、あい鴨が生産されているのです。

 

誇りある第三セクターとして

 

「従業員は、田野畑村を始め地元採用中心に70名。おかげさまで黒字経営を継続しています」と話す馬場さん。全国の多くの第三セクターが険しい道のりを歩んでいる中、(株)甘竹田野畑の運営は、不断の努力によって順調の様子。

 

手間とコストをかけても、いいものを生産して、地元に雇用と利益を還元する。

地元に誇りある基幹産業を創設し、社会に貢献する。

 

設立時、当時の田野畑村村長とアマタケ社長の約束が時を経て結実しています。

元気な合鴨たち
合鴨を育てる人
合鴨鍋
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