
俺、ますらお。
折笠健って書いて、おりがさますらおって言うんだ。
言いにくかったら、オリケンでも良いよ。
俺は日本の大農業地帯、十勝で農業やってて
生協さんとは親父の時代からのお付き合い。
褒めてくれたり、励ましてくれたり、叱ってくれたり。
生協の組合員さんには、とっても感謝してる。
この場を借りて、これまで支えていただいてありがとうございます。
そして、これからもよろしくお願いします。
答えは全部、
組合員さんが教えてくれた。
生協さんとの付き合いで忘れられないことがあるんだ。
もう、今から30年ほど前の話で俺も若かった頃。
当時、うちでは『メークイン』を『北海こがね』っていう品種に切り替えるかどうか、すごく悩んでてね。
ジャガイモの無農薬栽培をメークインであれこれ試していたんだけど、どうもうまくいかないんだ。それをある人に相談したら、それは『メークイン』だから失敗してて、『北海こがね』なら病気にも強くて味もいい、それにこの土地にもあっているって言われちゃってね。半信半疑試したみたらね、その通りなんだ。いい芋がいっぱいできたんだよ。
でもね、だからって当時の大定番『メークイン』を知名度のない『北海こがね』に全部切り替えるってのは流石に勇気いることでね、なかなか結論が出なかったんだ。
そこで頼ったのが生協の組合員さん。
うちで作った「メークイン」と「北海こがね」を持ち込んで比較試食をしてもらったんだ。そしたらね、ある組合員さんから叱られちゃってね。
「どうして、もっと早くこんなおいしいじゃがいもを出荷しなかったのか」って言うんだよ。嬉しかったな、あの時。それにつくづく思ったよ。迷った時は、ここに帰ってくればちゃんと答えがあるってね。




開拓者としての矜持
今夢中になってんのは自然栽培。農薬も肥料も施さずにね、育てんだよ。しっかり自然を見極めて、その土地に最適な品種を選び抜く。そしてその中から、味のいいものを消費者のみなさんに選んでもらう。こうやってね、この土地ならこの作物のこの品種っていう風に、少しずつ検証しながら進めてんだ。
俺たちのいる十勝は、大豆や小麦の国内生産が集中してる所でね。大豆、小麦というのは、みそ、醤油といった日本人の食の根っこになるよね。だから十勝の農業が変われば、日本の食が変わるってことなるんだ。今はうちの農場の約25%が自然栽培。最初の設計さえちゃんとできればね、あれやって、これもやっての足し算でなくてね、これもやめて、あれもやめての引き算の農業に。これをしっかり運営して、消費者の皆さんの支持も得れれば、きっと賛同してくれる仲間が増えていくと思うんだ。そうやって、この輪が広がれば、他の生産者が作ったものを通じて今まで支えてくれた組合員さんや消費者の皆さんに還元できることになって、これ以上ない恩返しになると思ってるんだよ。
110年前、多分原野だったこの地に俺の先祖は最初の鍬を入れたんだ。その時、どんな気持ちだったろうね。多分、俺なんかが想像できない苦労をいっぱいしてきて、それで今があると思うんだ。それにあぐらをかいちゃいけない。俺は俺の開拓をやっていかなくちゃと思っているんだ。
だから、うちのじゃがいもにはね、そんな夢がいっぱい詰まっているんだよ。