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紡ぐ、紡ぐ、紡ぐ。日本のごちそう、西会津町こしひかり。



福島県と新潟県の境に位置する西会津町は、 もっとも無名で偉大な米産地なのかもしれない。

内陸で標高の高い盆地故の、厳しくも美味しい米作りに適した気候。 粘土質で肥沃な土壌。 豊かに涌き出でる伏流水。 そして、この地の農家が営々と取り組むミネラル農法。

風と土と水と人。

それぞれの持ち味が渾然となり、 一粒の米に結実。 今年も黄金色の恵みが収穫の刻を迎える。

「こんだけ手かけてんだもの、自分たちの米が一番うまいと思うとる」 平地と異なり、規模も小さく、形も歪な田んぼ。 作業効率の大きく劣るこの地で、今年も慈しむように米を育てた農家は、 収穫を前にそう口を揃える。

その美味しさは、「食味分析鑑定コンクール国際大会」での金賞受賞など様々な機関での評価実績も証明。しかしどうしたことか、一般消費者の認知度となるとそれは決して高いとは言い難い。 そして近年は言われ無き理由で、特別栽培米などの米の出荷は大幅に落ち込み未だ以前の60%ほどの回復率だと言う。

あの山の向こう側は新潟県、 山一つ隔てた現実が重く辛い。

それでも 「毎年、米を懸命に育てる。そん事に嘘がなけりゃ、 こんなにうまい米だもの、いつか、西会津の米の良さが伝わるはず」 と農家は目の前の田んぼの世話に余念がない。

何十年、何百年。 米は、今年一年の労だけによるものではなく、 積年の鍬の労と想いが水田に堆積し、実をつけたものかもしれない。 忍耐、諦観、希望、悲しみ、喜び・・・。 今年も様々な想いが田んぼに注ぎ込まれる。 「生きてる限り米を作る。そしてそれを繋いでいく」 米作りとはそう言うものか。

艶めき深く豊かな味わいの西会津町産コシヒカリ。 それは綿々と紡がれる物語の味わいなのかもしれない。


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