「武相荘」に白洲夫妻の精神を訪ねる。
西南戦争から二年。
薩摩の西郷遺宅に尋ねし若人あり。
「西郷はおるか?」
迎えた家人、返して曰く
「西郷翁が城山に没するも知らざるか」
若人応えて
「西郷の肉は滅しても、精神ぐらいは遺っておろう」
果たして家人大いに感じ入り
深く語り合ったそうな。
若人の名は時代の傑物、頭山満。
迎えた家人は西郷家の食客、川口雪篷。
尋ねる者にして、迎える者あり。
西郷翁ほどの大きな精神は、
触れたものの其処彼処に、
そして共鳴する人から人へと伝播しながら
時を超えて生き続けるのでございましょう。
さて東京町田市「武相荘」。
言わずと知れた、日本の恩人、
白洲次郎と正子夫人の棲家。
「葬式無用、戒名不要」の人なので
当人には不本意なことかも知れませんが
お二人の棲家はしっかり保存整備されています。
多少演出されてはいますが
やはりお二人の高貴で凛としながらも
瀟洒で豊かなお人柄が息づいているようで
背筋が伸びつつ、頰が緩みます。
白洲さんにとって
GHQ相手に日本を背負って丁々発止の日々も
この地で大地に鍬振る日々も
愛車ポルシェを自在にぶん回す日々も
本質的には変わりなかったんじゃないかと
何となく思えました。
残念ながら
その魂を寸分でも受け継ぐには
こちらの器が小さ過ぎ、
全て溢れこぼれてしまいました。
ごめんね、ごめんねぇ。