しみじみ響くぜ、宮崎「おくのうどん」

午前中、最期のひとあがきと 取材先を訪ねたので、時間に余裕が無くなった。
宮崎での最後の食事、 これはもう「おくのうどん」しかない。
宮崎うどんの開祖、奥野豊吉氏のDNAを色濃く残すお店で、飾りっ気の全く無い質素な佇まいながら、優しくも気高く心を揺さぶれられるような一杯。これはもう宮崎を超えて日本のソールフードと言えるほど、大事なものがぎゅっと詰まっているうどんだ。朝6時からの開店から早々に列ができるというのも納得、それだけの吸引力が確かにある。
さて、この「おくのうどん」。 地道に歩みを積み上げてきたみたいなストーリーを想像しがちだが、これがどうして、そうとう波瀾万丈な路を歩まれて来ている。詳しく解説しているサイトが多数あるので、内容は省略するが、「細腕繁盛記」「どてらい男」でお馴染みの故・花登 筺先生のドラマさながらの、人の欲や妬み、嫉みの激しい渦の中、時に翻弄されながら
「心ば濁れば、うどんも出汁も濁る」 「商売をふとかすんために、うどんを作っちょるのじゃあ無いじゃろ。他人を潰すために、うどんを作っちょるわけじゃあんじゃろ」(私の想像です)
とばかりに負けるが勝ち、無理に争わず実直に味を守り続けたのが最後に勝ちを得た、みたいなお話。個性豊かな敵役にも事欠かないんですよ、これがまた。「銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」 細腕繁盛記での新珠三千代さんの名ナレーションがなぜか脳内にリフレイン。いやあ、名店にドラマありですね。